大学の帰り道。少し遅くなったな、と思いながら、暗めの路地裏を通る。いつもの帰り道。何の支障もなく、いつも帰っている道。近道だからしかたない。

「おねぇさん、ちょっと良い?」

勧誘まがいの誘いは良くあることで、いつも通り聞こえないふりで素通りしようとする。

「聞こえてんだろ?ねぇ、おねぇさーん。」
「お前、んなめんどくせーことしてんじゃねぇよ。」

タバコを吸いながら酒を飲んでいた男は立ち上がると、私の腕をつかんだ。

「ちょっと!」

抗議の声を上げる私を、男は二人がかりで壁に抑えつける。

「騒ぐなよ!」

そう言って、一人が私の喉元にナイフを突き立てる。

「おっ、大人しくなったな。」
「早くヤっちまおうぜ?」

そんなにスタイルが良いわけではないあたしに向かって、そういう二人の男。周りをいく人は見て見ぬ振り。私があからさまに盛大なため息を吐くと、男は不機嫌そうな顔で口を開いた。

「あ゛?何?お前。」

再び首もとに突き立てられたナイフ。

「殺せるもんなら、殺してみなよ。」

あたしがそう言いながら、あえてナイフに首もとを近付ける。血がにじむ。手首を押さえてくる男の手が一瞬怯む。

「ど・い・て!」

ナイフを持つ相手の手首を掴んで、外側にひねる。音をたてて、ナイフは地面に落ちる。

「失礼しちゃうよ」

そう言って、私はいつものバス停へと歩いていった。頭で考えるのは、首から流れ出る血をどうするか。本当、どうしよう。目立つのよね・・・。