「あはっ、上手くいった。」

そう言って現われたのは、女性というにはまだ若すぎる女。
けれど、少女というには大人すぎる女だった。
手には赤い携帯電話が握られている。

 「あっ、もしもし警察ですか?港の倉庫街を少し行ったところの道路を、不良がバイクで物凄いスピード出して走っているんですけど・・・・え?ああ、はい。その道路です。はい、お願いします。」

 そう言うと、そいつは電話を切って俺の前に座った。

 「大丈夫?」

俺が誰だか知ってか知らずか、そいつはそう言って笑った。

 「何・・・したんだ?」
 「え?ああ、ケータイであいつらおっぱらっただけ。いつもこの辺バイク乗り回していて邪魔だったの。」
 「そーかよ・・・」

俺がそう言って立ち上がりながらフェンスに寄りかかると、そいつはボーっと海を見つめた。