「ねぇ、このこすもすの中のいのちが始まることはないの…?」
「うーん」

大きなわんこは、唸って、黙った。

「ねぇ!」

ぼくは、大きなわんこがちょっと飛び上がったくらいに大きな声を出した。
大きなわんこは、ちょっと飛び上がった後、また、ふーっと息を吐いて、静かに話してくれた。

「あの丘の向こうに少し小さい丘があるんじゃがな…、そこにこすもすが沢山さいてるんじゃよ…」
「そこで、また、いのち、始まるの…?」
「…」

大きなわんこは、また、ちょっと黙って…。

「いや…、かわいそうじゃが…、やっぱりな、もう、そのこすもすのいのちはな、始まることはないんじゃよ…」
「そう…」
「ただ…、こすもすの沢山咲いてるあの丘の土に戻してやれば一人にはならんからな…」
「そう…、そうだね…」
「一人は寂しがったじゃろう…、こすもすもな…」

ぼくは、大きなわんこに「ありがとう」って言って、『向こうの丘』の土に君の体を戻してあげるために歩き始めた。