ぼくは、鼻先が『つんっ』としたままちょっと考えた。
考えて…、ぼくのそばで、まだ体を伸ばしている大きなわんこにまた聞いてみた。

「ねぇ…、いのちって、どこにあるの…?」

大きなわんこは、また、ゆっくり大きな声でお話してくれた。
「そうじゃな…、体の中じゃよ…」
「ふーん」
「小さな花の中にもちゃんとあるんじゃ」

大きなわんこは、ぼくの下にいたきみを見た。

「いのちってなに…?」
「うーん…、そうじゃな…」
「ぼく、わかる…?」

大きなわんこは、ちょっと黙って、いつのまにか出てたお星さまを見上げてから、ゆっくり大きな声でお話してくれた。

「楽しい…、悲しい…、寂しい…、嬉しい…、そうじゃな…、体の中から出てくるそれが命なんじゃよ」
「ふーん、楽しいって…?、悲しいって…?」
「わしをけとばしそうに走とったあの時、楽しそうじゃったがな…」
「そーかー!、ぼく、あの丘に走ってると、なんだか体が『ふわっ』となって、鼻先だって『くすっ』としてた…」
「そうじゃよ、そんなふうに体から溢れるもんが、みんな命なんじゃよ」
「じゃあ、ぼくが抜いちゃったせいで大好きなこすもすさんがゆらゆら揺れてくれなくなっちゃって、体がなんか『ずんっ』となって、鼻先だって『つんっ』としたのは…?、なに…?」
「うーん、それは、きっと、悲しい…、寂しい…、なんじゃな〜」
「そっか〜、あの『くすっ』としたり、『ふわっ』としたり、『ずんっ』としたり、あの、『ずんっ』ってするのがぜーんぶいのちなんだね」
「そうじゃな〜」

大きなわんこは、ふーっと息をはいて背伸びした。