「…、もう、ゆらゆらしたりしてくれないんだ…」

ぼくは、ポツンと大きなわんこに言った。
大きなわんこは、ぼくの顔を見て、フーッと大きく息をして、体を低くして、ゆっくりお話してくれた。

「…、命がな、消えてしまったんじゃよ…」
「どうして…?」
「このこすもすはな、あの丘の土の上から抜かれてな…」
「えっ、ぼくが抜いちゃったからなの…?」
「…、そう…、じゃな…」
「じゃあ、またあの丘の上にさしてあげたら、ゆらゆらしてくれるよね…?」
「…、いいや…、おわってしまった命はな、またはじまったりはしないんじゃよ…」
「ぼくにも、いのちってあるの…?」
「ああ…」
「じゃあ、ぼくのいのち、分けてあげるよ」
「命はな、分けてあげたりはできないんじゃよ、命はな、一つずつなんじゃ…」

大きなわんこは、ちょっと体を伸ばした。
ぼくは、また、とても鼻先が『つんっ』とした。