美紅がいなくなってからとぼとぼと歩いていると、後ろから誰かに突き飛ばされた。


「おい、美紅…っ!」



そう言って振り返ってから、目を見張る。


そこにいたのは、美紅じゃなかった。

「沖ー♪彼女に振られたんだって?」




「杉原…」


にこにこしながら俺の不幸を喜ぶのは、杉原 彩音(すぎはら あやね)。

親しみやすい奴で、割とよく話す。



見かけは大人なのに、中身が子どもっぽいところが玉にキズだ。


「まだ振られてねぇよ」


そう、まだ振られていない…はず。

たとえ、バカと大声で叫ばれても。