少し重たい足取りで大学へ来ると、里季が真っ先に俺に気づいた。



「どうだ、調子は?」


そう訊かれ、軽く返す。



「もう大丈夫だ」


里季がにやにやしながら、


「お前、熱出すと本当に甘えんぼだよなぁー」




…その話題を、1番出されたくなかった。

大学に来るまで、ずっと忘れようと努力していたのに。


「…美紅は?」



いつもはどこからともなくやってくる美紅の姿が、今日はない。