里季は俺の声を聞くなり、笑い出した。


「…気持ち悪いな、お前」



俺がそうつぶやくと、


「いやぁ、悪ぃ悪ぃ。だって沖、昨日のこと覚えてるか?」

苦々しい味が口の中に広がるようで、俺はそれをかみしめながら言う。



「…覚えてるよ」


覚えてる。


美紅にわがままばかり言ったことも、里季が訪ねてきたのを追い返したことも、美紅を困らせたことも、全部覚えてる。



「そうかそうか。じゃあ早く来いよ」


それだけ言って、里季は一方的に通話を切った。


「あっ、おい…っ」


まだ言いたいことがあったのに。


美紅は今日、いつもどおりだったか?

それだけが聞きたい。