「…え…っと…」
俺が言いよどんでいると、里季が朗らかに笑った。
「照れんなって!」
照れているわけじゃない、…と思う。
ついこの前の映画館での出来事がよみがえる。
…何やってんだ、俺。
本人だって気付いてない間に、あんなこと。
今さらになって、俺の中にたまっていく罪悪感。
ずきずきと良心が痛んで、ついでに頭まで痛くなってきた気がした。
「…っ」
くらりと、世界が揺れる。
里季の顔が一瞬ぼやけて、あわてて体勢を立て直そうとした瞬間― 。
「先パーーーーイ!!!」
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