映画館を出てから美紅は俺にずっと頭を下げ続けている。


「すいません…。ほんとに申し訳ないです…」


「爆睡してたな」


「うっ、み、見てたんですか…」


しょんぼりと肩を小さくしながら、俺の一歩後ろを歩く。

美紅はあれから映画が終わるまでずっと眠り続けていた。


だからあのキスのことも、きっと知らない。



「いやでも見えたんだよ」


べっと舌を出して美紅をにらむ。



いやでも見えた。

いやでも見てしまった。