美紅がびくっと身体を縮めて、しきりに頭を下げる。


「ほんとにほんとにすいません!家を出てからチケットを忘れたのに気付いて…っ」



泣きそうな顔で必死に弁解するのが面白くて、思わずくすりと笑ってしまった。


「き、キライになりましたか…?」



涙目で俺にそう訊ねてくる。


「さぁな」


このぐらいでキライになるなら、俺は何回美紅をキライにならなきゃいけないんだ?

そう思いながら美紅の手を引っ張る。


「今からならぎりぎり間に合う。行くぞ」


美紅の表情がぱっと輝いた。


「…はいっ!」


よたよたと進む美紅を懸命に支えながら、俺たちは走る。