そして今、俺は駅前の映画館にいる。
自分から誘っておいたくせに、美紅はまだ来ない。
もう約束の時間から30分は経つ。
「…おっせぇ」
そうつぶやいたとき、
「先パーーイ!!すいません、遅れました!」
ブーツのかかとをこつこついわせながら、美紅が慌しく俺のもとに駆け寄ってくる。
途中で何度もこけそうになりながら何とかたどり着き、肩で息をする。
危なっかしいことこの上ない。
「すっ、すいません!ほんとにすいません!」
「遅ぇ」
別にそれほど怒っているわけではなかったが、わざと不機嫌な声でつぶやいてみる。