その日は何とか逃れたものの、それからも美紅はことあるごとに同じことを訊ねてきて。


「先パイ。あのとき結局なんて言おうとしてたんですか?」


俺はその追及から逃げるのに必死で。



「忘れたよ、そんなもん」


我ながら白々しい嘘。

でも美紅はそれを本気にして、


「えぇーーー…。じゃあ思い出したら教えてくださいね?」



…バカで助かった。


ほっと息をついて俺はとりあえずこの件をなかったことにする。

罪悪感は俺の中にじりじりと焼きついていたけれど、しかたがない。



こればっかりは、言うわけにはいかないだろう。