「先パイ」


不意に呼びかけられて、俺は顔を上げる。


「私、がんばったんですよ」


「…まぁ、そうだろうな」



お世辞にも美紅は頭が良さそうには見えない。

俺が通っている大学はさほど難しいわけではなかったけれど、それなりに勉強はしたんだろう。


そう思って答えると、美紅が頬をふくらませた。



「違いますよ!勉強だけじゃないです」


「じゃあ何だよ」


美紅がえへんと胸を張る。


「先パイに似合うような女になるために、がんばったんですよ!」