いきなり覆いかぶさってきた俺の影に、美紅がきょとんと小首をかしげる。


「…先パイ?どうかしました?」


「何もねーよ」


ちょっとした独占欲だ、なんて口が裂けても言うもんか。



このまま次の駅で他の乗客が全員降りて、俺と美紅だけになればいいのに。


高校生のときはほとんど勢いに押されて付き合い始めたのに、今は多分俺のほうが美紅にはまってる。


…くそ。

あんなにバカっぽかった美紅は(今も充分バカだが)、大学生という肩書きも加わってかなり大人っぽく見える。



中身は高校生のときとなんら変わりないはずなのに。