そして夕方。 「先パイ、先パイ、せーんーぱーいー!!!」 どたどたとうるさい足音に俺は振り返り、ゆっくりとため息をつく。 「…何だよ」 美紅が顔を真っ赤にして息を切らしながら、にこにこ顔で言う。 「気は向いてくれましたか!?」 「あー…」 何だか少し前にそんなことを言ったような気もする。 俺は頭をぽりぽりとかきながら、渋々つぶやいた。 「ちょっとだけな」 美紅の表情がぱっと明るくなる。