里季は面白そうな顔でこの状況を眺めてやがるし。


美紅はといえば、自分から素直になれと言ったくせにもごもごと口を動かしているだけだし。


「会いたかった、お前に」


歯の浮くようなセリフをもう1度つぶやき、じっと美紅の瞳をのぞきこむ。


「えっと。あの、ですね、その、先、ぱ、い…」



真っ赤になった美紅は、言葉にならない言葉をいくつも並べながら後ずさっていった。


これはこれで面白いかもしれない。

「何だよ。自分から言ったんだろ?」



ため息混じりにつぶやいて、いつもの調子に戻る。

やっぱり、俺にあんなセリフは似合わない。