家に帰ってからも、昼間のことが頭から離れなかった。



コウタロウを怒らせてしまったことじゃなく、格闘技のチケットが高価だと聞いたこと。


最初から知っていれば、少しくらいはレオに感謝してたのに。



そういえば、ろくにお礼もしていなかったと思いだし、あたしは携帯電話を手に取る。



『おかけになった電話は、電波の届かない…』



圏外だった。


あたしは電話を切り、こないだレオからもらった彼の名刺を取り出した。



そして少しだけ悩んでから、名刺に書かれたレオの店の番号に電話をかけた。



プルルル……と呼び出し音が鳴る。


窓から向かいのビルを見てみたら、事務所のスタッフらしき男が頭をかきながら、面倒臭そうに受話器を取るところだった。