「あ……」



それは、何の変哲もないノートを破った紙切れ。


下手くそな文字でつづられた……置き手紙。



「ありがとうございます……」



引きつった笑顔で受け取った。



どうして、あたしはこんな物を持ち歩いているんだろう。


彼と離れてもう、2ヶ月も経ったのに。



「……あっ、しまった!」



あれこれ考えていたせいで、自販機の間違ったボタンを押してしまった。



ゴトン、という鈍い音と共に、出てきたのは

ミルクたっぷりの甘ったるいカフェオレ。


こんなの、あたしもコウタロウも飲まない。



「あーもう。最悪」



ため息をつきながら、取り出し口の前にしゃがんで、ベージュ色したペットボトルを取り出した。



「誰が飲むっつーのよ。こんな甘いの」



だいたい、あたしもコウタロウもコーヒーならブラック派で。



ミルクたっぷりのコーヒーを飲む奴なんか


あたしの周りじゃ

あいつぐらいしかいないじゃない……。



「……っ」



あたしは自販機の前に座り込んだまま、両手で顔を覆った。




……待ってるって、あの日言ったけど。


やっぱりあたしには自信がない。


そんな“勇気”はないの。



だけど。



「……だけどっ、やっぱり忘れられないよ」



レオ。


今でも好き。



目の前のゆるやかな流れに沿って生きていれば

いつか貴方のことも優しい思い出に変えられるの……?




「そんなにあいつが恋しい?」



背後で響いた声に、固まった。