マンションのすぐ下には、それほど広くはないけど公園があって、サラリーマンが木陰のベンチで昼寝していた。



「あの人、こんな昼間っからサボっちゃって、いいのかな」


「営業で外回り中とかじゃね?」



レオの言葉で、あたしはふと、風俗で働いていた頃を思い出す。



確かに昼間の客層は営業マンがほとんどで、空いた時間を利用してヌキにくる輩であふれていた。



セッケンのにおいがまとわりつく部屋。



固く結ばれたネクタイをほどけば、その下にあるのはシンプルな欲望だけだった。



あたしはどれだけの男に触れられた? 


どれだけの男を受け入れてきた?



そしてそのたび、どれだけ心がすり減っていくのを感じただろう。




今は寂しくない。



寂しくないよ、レオ。





「きっと……大丈夫だよ」



レオの肩に頭をのせてつぶやいた。



「あたしたちは、きっと大丈夫」


「そうだな」



いつもより少し大人びた声と共に、優しいキスが降ってくる。



公園の木々の葉が規則的に揺れて、夏の音を奏でていた。



大丈夫……。


あたしたちは離れないために逃げたんだから。



きっとみんな、あたしたちのことなんかすぐ忘れてくれる。


きっとコウタロウも、今頃ピンピンしてるよ。



大丈夫……。