「ここが俺の部屋ね」



そう言ってアキラさんが案内してくれたのは、大阪の中心から少しだけ離れた住宅街にある、ワンルームマンションだった。



引越しを控えているというだけあって、少し殺風景な感じの部屋。


部屋の隅にはガムテープで封をしたダンボール箱が並び、本棚の中はすっかり空だ。



「物少ないから、不便かもしれんけど」


「そんな……。充分です」



2週間。

とりあえず2週間はここで隠れていられる。



充分だと思った。



何も必要ないよ。


あたしとレオ以外、何も……。



「けど、これ捨てる前で良かったわ」



言いながら、アキラさんはクリーム色の合皮張りのソファに座る。



「これ、ベッドにもなるから。さすがに寝床なしはキツイやろ?」



アキラさんがソファの背もたれを手前に引くと、カチャカチャと音を立てながらリクライニングが倒れ、平らになった。



「食器類は、多少残ってる。勝手に使ってくれてええから」



てきぱきと部屋の中を確認するアキラさん。


あぁもう、こんなことならいろいろ残しとけばよかった、とかブツブツ言いながら。




「ところで、大阪見物がてらに、今晩は一緒に外食とかどう?」



突然のエリコさんのその言葉に、あたしたちは固まった。



街を徘徊するのは、どうなんだろう……。


やっぱりマズイ気がする。

いくらここが遠く離れた土地でも。