「いつもので」

声のトーンも変えずに担当の美容師に言い放つ。

「紗羅(サラ)ちゃん、いいの?」

「いいの」

あたしは、ある日を境に繰り返し髪を切るようになった。

いい加減、毎回、毎回いいの?って聞くの止めてほしい。

同じ会話を来る度に何回もめんどくさい。

待つ事、十分。

手渡されたモノを受け取り美容室をあとにした。

歩きながら鞄の中から携帯を取り出し電話をかけ、用件だけを伝えて切った。

「いつもの所で三時ね」

連絡はいつもこれだけ。

待ち合わせ場所に行くとさっきの電話の相手である上田はもう来ていて、あたしの姿を見付けると手を振ってきた。



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