「あらぁ陸、今朝は珍しく早いじゃない」 「…まぁね」 ──当たり前だ。 一睡も出来なかったんだから。 「ちょっと真弥起こしてくるから、先に食べてて」 「おー…」 母さんの言葉を軽く交わし、食卓につく。 隣に並ぶ姉貴の茶碗を見て、小さく溜め息をついた。 ──普通に振る舞えるだろうか。 上手く、演じられるだろうか。 “記憶のないフリをする” それが、散々悩んで悩んで悩みまくった結果の答えだった。