「…陸ー」
足をブラブラさせながら、姉貴が耳元で囁く。
「んー」
さっきまでの羞恥心はどこへ行ったんだ、と心の中でツッコミながら、適当に相槌を返した。
「…えへへ。なんかさ、昔を思い出すよね」
「…あぁ」
「昔は逆だったんだよね。私、よく陸のことおんぶしたっけなぁ」
昔の光景を思い出しているのか、クスクスと笑う姉貴。
──懐かしい記憶。
それでも俺の胸に、しっかり刻み込まれている、姉貴とのいろいろな思い出。
弱々しかった俺は、よくケガをしては姉貴におぶられてたっけ…。
「陸、背高くなったね」
「…そうか?」
「うん。いつの間にかあたしを追い越しちゃった」
小さく笑う姉貴。
吐息が耳にかかって、少しくすぐったい。
そして。
しばらくの沈黙のあと、再び耳元で囁いた。
「……陸、今朝のこと、ごめんなさい…」



