「…もしも」
『り゙ぐー……』
出たと同時に聞こえてきたのは、嗚咽混じりの真弥の声。
「姉貴!?どうしたんだよ」
ギョッとして問いかけると、電話の向こうの姉貴は、グスンと鼻を啜ったあと、消え入りそうな声で呟いた。
『今、予備校の帰りなんだけどね。ヒールが壊れちゃって……足、痛いの……』
──また、か。
少し呆れながらも、つい嬉しくなる。
いくら困った状況だからとは言え、姉貴は俺に頼ってくれた。
必要としてくれた。
そんな些細なことが、どうしようもなく嬉しくて、幸せで。
つい昨日の一件も忘れ、言ってしまったんだ。
「わーったよ。すぐ行くから、待っとけ」



