「…ちょっと陸。聞いてるの?」
「……ないだろ」
「え?」
「姉貴には関係ないだろ!」
「……」
やべ。
言っちまった…。
見れば、姉貴は眉を下げ、酷く傷ついた表情をしていた。
同時に押し寄せてくる、後悔と自己嫌悪の波。
「…悪い」
そう言った時には、既に遅かった。
「陸の馬鹿!もういい!」
そう吐き捨てて、バタバタと洗面所を出ていく姉貴。
その後ろ姿に、胸が締め付けられそうになった。
俺は何をやってるんだ…
これじゃ、ただの八つ当たりだ。
結局その日一日、姉貴は一言も口をきこうとはしなかった。



