「…また、真弥ちゃんか」 一呼吸おいて、梓はそう小さく呟いた。 ……“また” その言葉には心当たりがあった。 俺は時々、梓との約束を断って姉貴を優先することがあったのだ。 梓とのデートを切り上げて姉貴を迎えに行ったこともあれば、 “最中”に姉貴からの電話に出てしまったこともあった。 今思えば、あまりにも最低な行為だと思う。 梓が不審に思うのも無理はなかった。