あいつとすれ違いざま、 あいつは、私の腕をつかんだ。 「直樹に会いに行くのか?」 低い声は、 いつもより一段と低く聞こえる。 「うん。」 私はなるべく、普通を装って頷いた。 「直樹はいいやつだ。 俺が保障してやる。 お前のどこがいいんだか知らないが、 お前にはもったいないくらいだぜ。 ま、うまくやれよ。」 息の仕方を、 忘れた。