確かに、いつもの私だったら、

こんなドジを踏んだりするはずがないんだけど。

今日は、清が家を出て行くってことで頭がいっぱいで、

ほかの事を考えるスペースが余ってなかったんだよ。

ドアのほうを向いたまま、
バスタオルをぎゅっと握り締める。


「よくもこの俺をゴキブリ扱いしてくれたな。」


清の低い声がお腹に響く。

この場から逃げたいけど、
こんな格好で出て行くわけにも行かないし。

ちらっと、足元を振り返ると、
清の足の向こうに、脱いだ洋服が転がっている。