教室に入ると、真っ先に栞(しおり)が、
近づいてきた。
栞とは、入学式の時に席が隣になって、
すぐ仲良くなった。
一見美人で話しかけにくそうな雰囲気なのに、
話してみると気取った感じがなくて、とてもおもしろい。
「ちょっと~、
ひかりったら、やるじゃん!
あれ、清様と直様でしょ?
宝木中のSNコンビを引き連れて、
登校なんて!」
栞は肘で私をつつきながら、
なおも続ける。
「で?どっちが彼氏?」
私を見て、にやにや笑っている。
「せ、清様って・・、
水沼清のこと?
直様っていうのは、直樹君・・?
SNコンビって何?」
まったく話が見えない私は、
栞の質問に質問で返すしかなかった。
「何?知らずに一緒に歩いてたの?」
栞の大きな瞳が、さらに大きくなる。
「う・・ん、
だって、
今日会ったばかりだし・・。」
直樹君とは、
だが。
面倒な事情を省きたくて、
あいつのことは、あえて無視した。
「あの二人、私と同じ中学で、ちょっとした有名人なんだよ。
サッカー部のキャプテンと副キャプテン。
二人とも、めっちゃ、かっこよくてさ。
別の中学にも、ファンの子がけっこういるんだよ。
直様もいいけどさ、
私は絶対、清様!
もうさ、あの瞳に見つめられたら、
めろめろよ~。
超、きれいな顔でしょ?
芸能人みたいだよね。
背高いし、スポーツ万能で、頭も良くてさ。
ちょっと、クールなとこも、私好み!」
栞は興奮気味に、熱く語る。


