「せ~いっ!
清!
おはよっ!

お、誰?そのかわいい子。
どういう関係?紹介しろよ!」

制服からすると、同じ高校と思われるその男子は、
あいつの肩をトンとたたくと、
私の方をちらりと見て微笑んだ。

「朝からテンション高いな~。

こいつとの関係は、主従関係だ。
もちろん俺が主で、こいつが従。
ま、いわゆる下僕ってやつだな。

ところで、直樹(なおき)さ、
お前眼科行けよ。
かわいい子なんていうから、
きょろきょろしちまったじゃねぇか。」

突っ込みどころが満載過ぎて、
もはや、突っ込む気力さえ宇宙の果てまで飛んでいきそうなあいつの発言だ。

私は、さっきまでの動揺も忘れ、握ったこぶしに力を込めた。

殴ってやろうか?

「あははは。
お前、相変わらずおもしろいなぁ~。

俺は、緒方直樹(おがた なおき)。
清の中学からの悪友。
直樹って呼んで良いよ。


その制服、同じ高校でしょ?
俺は、C組だよ。
名前教えて?」

「え?C組?私もだよ。
私は、倉本ひかり。」

あいつの友達なんて、無視してやろうと思っていたが、
同じクラスということに反応してしまった。

女子は大体覚えたが、まだ男子のクラスメートまでは、覚え切れていない。
偶然同じ電車に乗れるなんて、ちょっとうれしい。

「まじで?
んじゃ、今日から友達っつうことでよろしく!

俺と清は、毎朝この電車に乗ってるから、
ひかりちゃんも明日からこの時間に集合な!」

人好きのしそうな笑顔に、思わず私も笑顔で頷きかけたが・・・
何かがひっかかった。


あっ!
私ってば

ひょっとして、
この電車に間に合うように
走らされた?!

まんまとあいつにのせられて?

“偶然”じゃない!

くうぅ・・・・やられた!!!


あいつに視線を移すと、
私の百面相の意味に気づいたのか、

あいつはおもしろそうに、
口の端を吊り上げて笑った。