下校しようと、
学校の門を出たところで、
ひかり!という声に呼び止められた。
1年ぶりに会うけれど、
すぐに父だと分かった。
あいかわらず、スーツにネクタイの
いかにもサラリーマンな格好だ。
心さんたちには知られないほうがいいと思ったので、
栞には、父と会ったことは
内緒にしてもらうように頼んだ。
再婚しようって時に、
私が父親に会ってるなんて、
言わないほうがいいよね?
私は、父と二人で、
駅近くのコーヒーショップ
に入った。
「久しぶりだな、
ひかり。
元気だったか?」
「うん。
よくここがわかったね。」
「幸子に聞いてね。
遅くなったけど、入学おめでとう。
それと、誕生日のお祝いも。」
私を押し付けて出て行ったくせに、
いまだに母のことを“幸子”と
呼び捨てることが、私のかんに障ったが、
父から、渡された封筒を、
黙って受け取った。
ただの茶封筒だが、
1通には、入学祝、もう1通には、誕生日おめでとう、
と書かれている。
中身は、見なくても容易に想像できた。
この10年間、
誕生日に父がくれるものは、毎年同じだったから。


