その後は、3人で、
くだらない話をして、瞬く間に時間は過ぎていった。


「ひかり、栞。
来てくれてほんとにありがとう。」


帰り際、雅は、すごく嬉しそうに笑った。


「あ、そういえば、
今年は、
おじさんに会ったの?」


ひかりが何も言わないから、
気になってたんだ、
と雅は続けた。


“おじさん”と言うのは、
水沼のおじさんではなく、

青木義和(あおきよしかず)、
つまり、私の本当の父のことだ。

毎年、私の誕生日前後に、
父は私に会いに来る。

今年は、まだ連絡がない。

連絡が来たら、
母の再婚の話をしなくてはならないので、
今年はなおさら会うのが憂鬱だった。

私をひきとりたい・・

そんなこと、
絶対に言うわけはないんだけど、

毎年、父から連絡が来るたび、
ほんの少し期待しては、

落ち込むことを繰り返していた。