「やっと起きたか。」
「私・・?ここ・・?」
「保健室だよ。
お前、体育の授業中に、
ボールに当たって気絶したんだ。」
そうだった。
顔面に当たって、あまりの痛さに倒れたんだった。
倒れたときの状況を思い出すと、
他の嫌なことも同時に思い出して、
少し暗い気分になった。
「あんたは、なんでここにいるの?」
動揺しているのを知られたくなくて、
話題を変えると、
あいつは、眉間にしわを寄せて、
明らかに不機嫌になった。
「なんでだぁ?
まぬけなお前が、鼻血を吹いて倒れたと直樹に聞いて、
心配して来てやったんだろうが。」
「え?そうなの?
ごめん。」
私がすまなさそうにあやまると、
あいつは、戸惑ったような顔になった。
「その手、どうした?」
あいつに言われて、自分の手を見ると、
引っ掻かれた様な爪の後が、3本、
赤い筋になっている。
「なんでもないよ。」
ボールを取られたときのものだと、
すぐに分かったが、
あいつに見られたくなくて、
布団の中に手を隠した。
あいつは、怪訝そうな顔をしていたが、
それ以上何も聞かなかった。


