私が顔を歪めると、
大野さんが大きな声を出した。
「ごめ~ん。
強すぎた?」
「ううん、大丈夫!」
本当は、もう少し弱くしてほしかったが、
言いづらかった。
バスケ部にいたんだから、
これくらいが普通なんだろう。
「行くよ~。はい!」
私のパスは、勢いがなく、
大野さんにワンバウンドして、
やっと届いた。
「は~い!」
私のボールを拾って、
大野さんが、私にパスする。
またしても、正確なコントロールで、
私の胸に、ボールが飛んできた。
が、
今度は、受け止めきれずに、
ボールがはじかれてしまった。
さっきよりも、
強烈なパスに思えた。
「大丈夫?」
大野さんが声をかけてくれる。
「大丈夫だよ。ごめんね!」
転がったボールを取りに行くと、
誰かの足にひっかかり、
私は豪快に転げてしまった。
思わず手をついた体育館の床の摩擦で、
パスを受けた手のひらが、
ますます痛んだ。


