「髪ぐらい梳かしてこいよ。」
ひどい形相の私を見て、
あいつは、ため息をつく。
「ちゃんと、
・・したけど、
走ったか、・・ら・・、
こうなったの!」
はぁはぁと、
息切れをしながら、
あいつを見るが、
一緒に走ったのに、
息ひとつ乱していない。
「まったく・・、」
仕方のないやつだな、
と言いたげに
あいつは面倒くさそうに
短い息をひとつ吐いた。
同時に、あいつが
私の髪をやさしく
梳き始めた。
満員電車の中で、
離れることもできず、
拒否の声を出すのも
ためらわれて、
私はされるがままになっていた。
なんか、恥ずかしい・・。


