違う! 私が好きなのは、 “清” だよ。 そう言いたかったが、 言葉は喉の奥にひっかかったまま、 出てきてはくれない。 ・・お母さんが困るよ。 ・・振られたらどうしよう。 ・・今のままなら、少なくとも家族になれる。 言い訳ばかりが、 脳裏に浮かぶ。 かろうじて、 首を横に振ったが、 あいつの両手に 挟まれて、 顔は、うまく動かなかった。 私のその様子を、 自分に対する拒否の姿勢と とったのか、 あいつは、 私の頬から 力なく両手を離した。