あいつは、 手早く救急箱をしまうと、 両手で私の頬を挟んで 顔をつぶした。 「ら、らり(なに)するの!」 頬を寄せられて、まともな発音ができない。 「ぶす。」 あいつは、 いたって普通の口調で、 一言答えた。 ぶすなんじゃなくて、 わざわざぶす顔にさせられてるんですけど! ぶさいくな顔のまま睨みつけると、 あいつは、低い声で一言だけ口にした。 「お前、 直樹と 付き合うことにしたのか?」