「包丁の刃元から刃先までを使って、
引くように切っていくんだ。」
あいつは、私の手を握ったまま、
包丁を右に傾けると、
すぅ、
っと魚の身に切れ目を入れた。
面白いように、
次々と刺身が出来上がっていく。
「うわ~。
すごい!!
ね、今度は、
私が切ってみるから、
力入れないでね。」
私は、
包丁の刃先に神経を集中する。
あいつは、
手を添えてはいたけど、
私の意志で、
包丁が動いた。
「できた!!
できたよ!!」
うれしくなって、
思わず、あいつのほうに顔を向けると、
あまりの近さに驚いた。
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