「…瑞樹ちゃん?」



 橘は俯いたままの瑞樹を覗き込む。

 ぎりぎりまで溜めていた涙の粒がポロリと落ちて足元のアスファルトに染みを作った。



 「淋しくなんかないもん!…だけど…だけど!瑞樹が、…瑞樹はほんとはこの世界にいないんじゃないかって感じる!」



 落とした視線を持ち上げ、隣の、自分よりも上にある歳老いた橘の顔向ける。

 真摯なまでの眼差しは橘を射抜くように正面から捕らえた。