静かな車内、ヘッドフォンから漏れる音楽、誰かの大きなくしゃみ、携帯のボタンをいじる音。


隣で聞こえてくるのは本のページをめくる音と進藤くんのゆったりとした呼吸音。


眠気を誘うには充分な環境だ。


一瞬意識が飛んでふらりと進藤くんの肩に寄り掛かってしまった。


「あっごめんっ」


思ったより大きな声を出してしまったのに気づき、口をつぐんだ。


「寝ていても構いませんよ。どこで降りるんですか?」


「西尾」


「すごい奇遇ですね。僕も西尾です」


「……私、寝ないから」