皆川が進藤くんに背を向けて、私に小声で囁いた。


「なんで蹴ったんだよ」


「だってあいつの態度ムカつくんだもん」


「その気持ちはよーく分かる。けどな、手は出しちゃまずいだろ。いや足か。まぁとりあえず謝っといた方がいいんじゃないの?」


「そりゃそうかもだけど…」


ちらりと進藤くんの顔を見ると、進藤くんはあくまで無表情のまま私を見ていた。


その目は明らかに私を挑発していた。


ムカッ


「絶っ対謝んない!」


私は憎々しげにそう言い放つと前に向き直った。


「何言ってんだよバカ!」と小声で叫ぶ皆川を視界の端において、ただ黒板を見つめていた。