日直当番

「岩戸!」


皆川が叫ぶと由理が振り返った。

泣いているように見える。


「何をやっているんですかこんなところで」


「!?」


不意に後ろから声を掛けられ心臓が跳ね上がる。

なんと後ろには自転車にまたがる進藤くんがいた。

白いカッターシャツに黒いベストとは、いかにも進藤くんらしい服装。

しかもフェイクタイ付のシャツっておまえオシャレか。

それにしても神出鬼没だなこの男は。


「ちょ、びっくりするじゃない。進藤くんも隠れて」


「?」


「今皆川の一世一代の告白なの。黙って見守ってあげて」


「仕方がないですね」


進藤くんは自転車を下りて私の後ろに屈んだ。

後ろに感じる進藤くんの気配、耳元にかかる進藤くんの吐息にどきっとする。

いやいやそんなことより…。


ふたりと私たちの距離はおよそ10メートル。

少し声が聞きづらいので耳をそばだてる。


「岩戸、誤解なんだ。俺と神崎は付き合ってないよ。マックのときはちょっと相談にのってもらってただけだし、神崎が岩戸に俺のことをあんな風に言ったのも岩戸が俺のことどう思ってるのか聞き出してもらいたかっただけだし、さっきの会話も、その…」


皆川は緊張しているのか若干挙動不審だ。頑張れ皆川。