それからは、一年間の空白を埋めるように勉強して、やがて高校を卒業し、大学も出て、家庭も出来た。


自分が体験した事なんて"高校の時のちょっとした出来事"くらいになって他の記憶に埋もれていった。








「ユウ、帰るよ」



日の沈み始めた公園で、自分の横にいたはずの息子がいないのに気付き、振り返って声をかける。


息子はコンクリートで作られた無愛想な水飲み場の脇でぼうっと立ち尽くしていたが声をかけられ思い出したようにこちらを向くと、

一度先程まで見ていた方を振り返り、
少し固まったかと思うと駆け出して僕の腰辺りに体当たりするように抱き着いた。



「何か面白いものでも見つけたかい?」


息子は首を横に振る。




「変な奴がいたんだ」