「見た時に、"あ、孝彦さんだ"って思ったの。 でも、どうすれば元の彼になるかなんてわからなかったし、そんな必要ないような気がして…新しい名前を付けて、育てたの。 それが、ヒグラシ」 なんて事だろう。 母の強い母性は、彼女という精神を再び構成するだけの力を持っていたのに対し、 その母性に感化され、再構成する力を持ち得なかった父の精神は全ての人間の根底にある赤ん坊としての構成をすることで新しい存在を展開した。 ヒグラシは僕の兄弟であり、父だったのだ。