今日あたり、犯されるかもしれない。
そんな予感を頭にちらつかせながら、二年C組の教室へ向かう。
がらんとした廊下には、夏の訪れを告げる蝉の鳴き声が響きわたっていた。
汗ばんだ肌にブラウスがまとわりつく不快感。
にじみ出る汗が暑さからくるものなのか、あるいは緊張からくるものなのか、私自身にも判断がつかない。
十代の持て余す性欲。
オスとしての覚醒。
遺伝子に組み込まれた生殖本能。
それが制御しきれない衝動であることは理解している。
ましてや、私みたいな女と同じ空間に閉じ込められるわけだもの、なお更だわ。
私にとってはそう、まるで肉欲の海へ身投げするようなもの。
盛りのついたオスがひしめき合う檻の中に、突如として放たれるメス。
どうなるかは目に見えてる。
けれど、私は絶対に逃げたりなんかしない。
男子校への赴任が決まった時からとうに覚悟はできてる。
私には教師として、その職務をまっとうする責任がある。
聖職者としての使命を背負ってる。
教室の入り口に立ち、一度大きく深呼吸をする。
引き戸越しに生徒たちのざわめきが――メスを欲する獣たちの呻きが聞こえる。
さて、気を引き締めていかなくちゃ。
諸見里すみれ、二十九歳。
教職に身を捧げた女の生き様をその目に焼きつけるがいいわ――。
そんな予感を頭にちらつかせながら、二年C組の教室へ向かう。
がらんとした廊下には、夏の訪れを告げる蝉の鳴き声が響きわたっていた。
汗ばんだ肌にブラウスがまとわりつく不快感。
にじみ出る汗が暑さからくるものなのか、あるいは緊張からくるものなのか、私自身にも判断がつかない。
十代の持て余す性欲。
オスとしての覚醒。
遺伝子に組み込まれた生殖本能。
それが制御しきれない衝動であることは理解している。
ましてや、私みたいな女と同じ空間に閉じ込められるわけだもの、なお更だわ。
私にとってはそう、まるで肉欲の海へ身投げするようなもの。
盛りのついたオスがひしめき合う檻の中に、突如として放たれるメス。
どうなるかは目に見えてる。
けれど、私は絶対に逃げたりなんかしない。
男子校への赴任が決まった時からとうに覚悟はできてる。
私には教師として、その職務をまっとうする責任がある。
聖職者としての使命を背負ってる。
教室の入り口に立ち、一度大きく深呼吸をする。
引き戸越しに生徒たちのざわめきが――メスを欲する獣たちの呻きが聞こえる。
さて、気を引き締めていかなくちゃ。
諸見里すみれ、二十九歳。
教職に身を捧げた女の生き様をその目に焼きつけるがいいわ――。