知らない駅に独りで佇む。








空は遥か遠くにあり、星は見えない。

地は彼方遠くにあり、足元は見えない。




孤独とはそういうものだ。


ひっそりと、それでいて確実に内部を侵食する。





死に至る病が絶望であるならば、生に至らない病は孤独である。



他人と自分から離反する自分。


真実孤独。
孤独。
こどく。
コドク。


闇より鋭く。
光より深く。
嘘より速く。
真より甘く。



剥離された自我は、際限なく広がり、霧散する。



「……………」



駅を出た。


闇が足に纏わり付く。
膝まで闇に浸かっている。


道標はなく墓標が連なる道すがら、何をするでもなくただ歩く。


まるで人生のようだが、まるで人生とは違う。



人の生に終わりはない。この道に終わりはある。


小さな違い。
くしゃみ1つ分の差異。
往々にしてそんな所だ。



「…………」



墓標は続く。


色、

材質、

形、


が豊富に存在する。


楽しい道だ。
こんなに愉快な道なんだ。
きっと観光名所に違いない。
それ以外許されない。



「――――」


首を回した。

見事な橋がある。



やはりここは名所だ。

一志は橋を見上げた。


遥か上空にひっそりとぶら下がっている。
人影はない。
それでこそ、橋だ。


気持ちの高揚に従う様に、闇が腰の辺りまで水位を上げた。
墓石は自然の摂理に従い、きちんと闇に浮かぶ。









――――くじらだ。








不意に閃いた。


この闇はくじらなんだ。