ハナから逃げる気はない。

そのことを示すために一志はMDプレイヤーから伸びたイヤホンを耳に、ひやりとつけた。


MDはMDであるが故に、やがて不親切に音楽が流れ始めた。


何かの光に煽られ、奇しくも外界を見た。

見てしまった。





海がいた。





ただ、ゆったりと腹の内に全ての感情を飲み込んで、海が横たわっていた。



一志は海が電車の踵に魔の手を伸ばさないか心配だったが、それは杞憂に終わった。



海は絶えず、かぷかぷと笑っていた。