電車が来た。


先程から背後で聞こえていた音がクラスメイトの声に酷似していたが、駅は暗く、本人かは分からなかった。

それに、そもそも自分は彼女の顔をまともに見たことがなかった、見えたとしても分からない。


考えても詮がないこと。


一志は頭から疑問を払拭し、軋む箱に乗り込んだ。




車窓からの景色を楽しむつもりは毛頭ない。
一志は世界に背を向けて座った。


そうすることで、自分が
保てる気がした。
そうしないと、自分が崩れる気もした。


公衆便所の黄ばみのような色をした照明が欝陶しくて仕方なかったが、これは我慢をするしかない。

器物破損は、良くないからだ。
良くないが、悪くもない。
そこらへんのバランスが難しい。



吊り広告に目を這わす。

「合格祈願きっぷ」の広告だった。
頑張っているな、という感想が何となく浮かんだ。



他人事だった。