スタッカート

数学の時間、あてられた問題を黒板に書きながら考えるのは、もう行くことのできないあの場所のこと。


今頃、ハチさんは、今度は誰に告白しようかと考えているんだろうか。


恵さんは、またハチさんに意地悪をして、
放課後、勇太さんは、昨日のように学校のどこかに花を植えるんだろうか。

トキは…トキは何をしてるんだろう。

歌ってる?
寝てる?
私のこと、怒ってる?

昨日、ほとんどの時間不機嫌な顔をしていたトキを思い出す。


考えれば考えるほど虚しくなった。


長い証明問題を書きおわり、席についた私に向かって先生が言った「難しい問題なのによく解けたな」という褒め言葉も、私の心を軽くすることはなかった。